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ネパール人人質殺害の衝撃

イスラム系ウェブサイトに掲載された殺害後の13人*1(共同通信)

 

殺害までの経緯

8月23日、ネパール外務省は同国の出身の13人がイラク入国管理局通過後武装勢力により拉致されたと発表した。 (正確には12人であったが) イスラム系ウェブサイトには拉致された12人がはっきりと写されており、彼らが人質に取られているのは事実となった。 先日毛沢東主義者の活動が激化して手を焼いていた政府にとってまた新たな事件の発生である。

同月30日、事態は急変。 人質に取られていた12人を殺害した場面を含むビデオがイスラム系ウェブサイトに公表されたのである。

マスクを覆って顔を隠したイスラム武装主義勢力の男が、目隠しされて地面に寝転がっているネパール人らしき男の首を切って殺害。 その後の映像では、ライフルを抱えた男がうつぶせになっている残りの11人の頭を次々と打ち抜くという衝撃的なものであった。 4分という短いビデオの最後にイスラム武装主義勢力の男はこう言った「我々は断固アメリカ擁護のイラク政府と戦いつづける」と。

31日、ネパール外務省長官は「このビデオの内容だけでは彼らが本当にネパール人で、殺害されたという証拠にはならない、引き続き調査を行う」と陳述したが、絶望に打ちひしがれる彼ら12人の家族の顔が事実を物語っているようであった。

 

何故ネパール人が?

ロシアの学校襲撃テロであまり大きく取り上げられないこの事件ですが、疑問をもった人も多いのではないでしょうか? 「何故ネパール人がイラクに?何故ネパール人は殺されたのか?」

ネパール政府は同国の市民がイラクで仕事をすることを安全の都合上禁止している。ところが推測では17000人ものネパール人がクエートからサウジアラビアにかけての中近東、20000人ものネパール人がこの戦争地帯、湾岸地域で働いているのである。

その裏にはやはり貧困があるのだろうか? 今回殺害された12人もヨルダンでイラク入国の話を聞いたようである。 「イラクに行けば仕事がいっぱいある、しばらく仕事をすれば大金持ちだ」という人材派遣会社の甘い話に乗ってしまったのだろう。 貧困層からの脱出はほとんど不可能に近いネパール人にしてみればまたとない千載一遇のチャンスだと思ったのだろう。 金持ちしか金を持っていないネパールの社会性が引き起こした惨事と言えなくも無い。

さて、それでは何故ネパール人は殺されたのか?今までにも人質にされた外国人は多く、開放されたケースも稀ではない。 日本人3人が開放されたのは記憶に新しいし、先日インド人の人質も開放されたばかりだ。 それでは何故ネパール人は殺害されたのか?

アメリカの強い要請にもかかわらずネパール自体はイラクに軍隊を派遣していない、恨みは買っていないはずだ。  一説にはヒンドゥー教徒だったからというのもあるが、これは可能性が薄い。 ヒンドゥームスリムの対立は南アジアの話であり、中東周辺はむしろムスリム、キリスト教徒対立の歴史が強い。 政府の対応が遅れたために殺害された、というのは有力である。 なにしろイラクと外交関係の無いネパールはイラク国内に大使館が無い。 犯人側と連絡を取り合うときに他の国を介さなければならなかったというのが遅れの原因である。「イラクで働くネパール人を早く自国へ返すように」という犯人達の一つの要求に政府が対応できなかった、ということである。 

最後に加えると、イスラム過激派のアメリカに対する恨みは根深い。 この12人のネパール人はイラク入国後アメリカの軍事施設で働く予定だった、という話がある。 だとすると12人がアメリカに荷担するもの、とみなされてしまったのかも知れない。 またはただの見せしめにされたのか、結局のところ要因はわからない。 あるのは事実ただ一つ、ネパール人人質12人が殺されたということである。

イラクでの事件後、カトマンズで起こった暴動 モスクを占拠する暴徒*1(共同通信)

 

鎮圧に当たる軍隊*1(共同通信)

 

連鎖するカトマンズの暴動

事件はこれだけでは終わらない。 人質12人殺害のニュースを受けてカトマンズでは暴動が発生、カトマンズ市内は一時騒然とした。 学生を中心とした暴徒集団は政府関係の建物、人材派遣会社、イスラム教徒のモスクを次々と襲撃。 翌日にはパキスタン航空、カタール航空等も攻撃の対象となった。

市内では外出禁止令が発令、事態の沈静化に勤めている。 (夕食の準備をする夕方の2時間だけ、買い物として外出禁止令は解けたそうである。ネパール人の国民性を表す面白い例ではあるが、、、彼らは本来好戦的ではない) 

但し、混乱で見失ってはいけないのはこれは宗教対立ではない、ということ。 ネパールでは宗教対立は少なく、平和共存がなされているはずである。 モスクに通う多くはネパール人やインド人のイスラム教徒であるし、カタール航空やパキスタン航空でも多くは同胞が働いているのではないだろうか? 事態が関係の無い方向性に向かっていってはネパール自体が危機に陥ってしまうのではないか? ネパール人の中にも冷静にものごとを見ている人達がたくさんいます。 事態が正常化したらいつもどおりのカトマンズに戻るはずです。

一刻も早いカトマンズの正常化を願うとともに殺害された12人の冥福を祈りましょう。

*カトマンズの状況については現地在住のかたより貴重な情報をたくさん頂きました。

*1写真はhttp://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/ap/nepal_iraq_hostagesより